2023年に公表された「フリースクール白書2022」を基に、オルタナティブスクールの運営者の視点から現状と今後の課題について詳述します。
1. 運営体制とその課題
184のフリースクール・オルタナティブスクールから得たデータによりますと、運営形態はフリースクールが57.6%と主流を占めています。
その次にオルタナティブスクールが10.3%となっています。また、運営主体としてはNPO法人が42.6%で最も多く、法人化の動きが見られます。
運営者視点:
運営体制の法人化が進んでいますが、持続可能な経営を実現する法人はまだまだ少ないようです。これに加え、オルタナティブスクールの認知度向上とカリキュラムの付加価値向上が必要とされています。
2. 生徒受け入れ状況とその課題
74%のスクールが子ども20人までを受け入れていて、特に5人以下の子どもを受け入れるスクールが29.2%となっています。
多くのスクールが発達に課題を持つ子どもたちを受け入れており、その中でもADHD, 自閉症スペクトラム, LDが最も多いです。
運営者視点:
小規模運営が多く、特定のニーズに応える個別対応が可能ですが、発達に課題のある子ども達も多く、学びの質の保証の観点からも専門家の支援を受けたカリキュラム開発や対応が課題だと感じています。
3. 活動内容とその課題
日本のフリースクールのほとんどは90.8%が通所型のみとなっています。
開室日数では週5日以上が70.6%で、毎日通えないスクールが30%存在しています。
活動内容は多様で、体験的学び(90.6%)、教科学習(72.5%)、工作、ものづくり(68.8%)などが主流となっています。
運営者視点:
フリースクールのほとんどが通所型となっており、これは地域社会への組み込みと子どもたちに学びの場を提供できています。それでも30%のスクールが毎日の通学を提供できないという点は、利用者とその家庭への選択肢提供という面では課題が残っています。
4. 財政規模とその課題
団体の財政規模は250万円までのフリースクールが28.3%となっています。
全体の73.3%が1000万円までのスクールです。フリースクールの会費・授業料は68.9%のフリースクールが3万円以下で、最も多いのは会費1万円以下の27.8%です。
運営者視点:
財政規模が小さく、多くのスクールが厳しい経済状況の中で運営されています。
これはスタッフの待遇や教材、施設の品質に影響を与える可能性があります。
小規模であることによる柔軟性とコミュニティの緊密さも重要ですが、安定した運営と質の高い教育を提供するためには、適切な財政基盤の構築が必要です。
授業料は、月謝が3万円以下と低めに設定されているスクールが多く、比較的多くの家庭がアクセス可能な教育環境を提供しています。
しかし、これが経済的な制約となり、スクールの運営資金を限定している側面も否めません。
5. スタッフの待遇とその課題
全体の約70%のスクールが常勤の有給スタッフが3名以下で、そのうち21.3%は常勤スタッフがいません。
待遇面では、常勤スタッフのうち12.8%が無給です。
スタッフの月収の額で最も多いのは15〜20万円以下で36.5%となっており、月収10万円以下が10.6%を占めています。
月収25万円以上は15.3%に留まります。
運営者視点:
今回の調査データから見ると、スタッフの待遇に関してはかなり厳しい状況にあります。待遇面が厳しいと、職員の定着率と職場環境の向上に大きな障害となります。
また、スクールのほぼ7割が3名以下の常勤有給スタッフで運営されていることから、それぞれのスタッフが多くの役割を担当していることが推察されます。
これは一方で、スタッフ一人一人が大きな影響を持てるというポジティブな側面がありますが、負担が大きく、バーンアウトにつながる可能性もあります。
結論
今回の調査からも、フリースクールやオルタナティブスクールが、既存の学校教育から漏れてしまっている不登校の子どもたちにとって重要な場となっていることがわかります。一方で、その運営実態はかなり厳しい状況にあり、設備・人材などさまざまな課題が山積しています。
今後は、持続可能な運営の構築のために効率化と学びや体験の質の向上を目指した戦略的な運営が不可欠です。
【スタディプレイスとは】
ICT(情報通信技術)を活用した個別最適化学習や、社会で必要な知識・スキルのカリキュラムを提供するオルタナティブスクールです。
福岡市西区・東区、大野城市、行橋市、オンライン校を含めた合計5校を展開しており、経済的な背景に関係なく、すべての子どもたちが学べる独自の奨学制度もあります。
入校をご検討中の方は見学・体験が可能です。まずはこちらからお気軽にお問い合わせください。